医療費控除とはどう違うの?
支払う医療費そのものが減らせるって聞いたけど、具体的な金額っていくらなの?
ちょっと難しいお金の話が続きますが、こちらもしっかり解説していきます。
その①:高額療養費とは
月初から月末までの1か月で、一定の金額(自己負担限度額)以上の医療費を支払った場合に、自己負担限度額を超えた金額が、公的医療保険(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支
部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など )から支給されるものです。ただし、高額療養費の対象となるのは、保険適用となる医療費のみです。分娩にかかる費用は、保険適用外となるので、この場合、帝王切開や妊娠中の長期入院はその対象となります。
他にも妊娠・出産で保険適用となるケースはいくつかありますので、医療費が高額となった場合、どなたにも受け取れる可能性があります。
その②:「医療費控除」と「高額療養費」の相違点
この二つの仕組みはどちらも、多額の医療費を支払った場合の負担を軽減するために設けられたものです。
では具体的にはどう違うのでしょうか。
制度 | 申請先 | 対象となる期間 | 医療費の範囲 | 関係する内容 |
医療費控除 | 税務署 | 1/1〜12/31の一年間 | 保険適用内・外の治療費 | 税金の控除 |
高額療養費 | 加入先の医療保険者 | 月初〜月末の1ヶ月 | 保険適用分の治療費 | 医療費の払い戻し |
これら二つを併用する場合は、高額療養費の申請を行なった後、それでも年間の窓口負担額等の合計が10万円を越える際に利用すると良いでしょう。どちらが得になるかと言えば、1月毎に申請することのできる高額療養費の方が申請すると得をすると言えます。
その③:高額療養費の対象となるもの
保険適用される診療に対し、患者が支払った自己負担額が対象となります。医
療にかからない場合でも必要となる「食費」・「居住費」、患者の希望によって
サービスを受ける「差額ベッド代」・「先進医療にかかる費用」等は、高額療養
費の支給の対象とはされていません。
帝王切開の他に妊娠・出産で保険が適応されるケース
つわり(重症妊娠悪阻)
流産・早産
子宮頸管無力症
妊娠高血圧症候群
逆子・前置胎盤の超音波検査
児頭骨盤不均衡の疑いでのX線撮影
微弱陣痛などで陣痛促進剤を使用
止血のための点滴
分娩停止や胎児機能不全などによる鉗子分娩・吸引分娩
頸管損傷・会陰裂傷Ⅱ度以上による縫合術
赤ちゃんの新生児集中治療室への入院 など
高額療養費の支給を受ける権利の消滅時効は、診療を受けた月の翌月の初日から2年です。 したがって、この2年間の消滅時効にかかっていない高額療養費であれば、過去にさかのぼって支給申請することができます。
その④:高額療養費の計算方法
毎月の上限額は、70歳以上かどうかや、所得水準によって分けられます。 また、70歳以上の方には、外来だけの上限額も設けられています。 ここでは、出産の場合で利用することを想定しているので、70歳未満の場合の計算について解説します。
<69歳以下の方の上限額>
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
ア | 年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
イ | 年収約770~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
ウ | 年収約370~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
エ | ~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 | 57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
注 1つの医療機関等での自己負担(院外処方代を含みます。)では上限額を超えないときでも、同 じ月の別の医療機関等での自己負担(69歳以下の場合は2万1千円以上であることが必要です。) を合算することができます。この合算額が上限額を超えれば、高額療養費の支給対象となります。
自治体によっては、独自の医療費助成制度があり、医療機関の窓口での支払額が高額療養費の負担の上限額より低くなる場合があります。詳しくは、ご加入の医療保険やお住まいの自治体にお問い合わせください。
世帯合算
ひとり1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や、同じ世帯 にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限ります。)の受診について、窓口で それぞれお支払いいただいた自己負担額を1か月単位で合算することができます。
(1)同じ健康保険に加入している家族の医療費
(2)それぞれの医療費の自己負担分が2万1000円超(70歳未満)
(3)自己負担した医療費の合計が世帯の限度額を超えている
世帯合算における計算や申請は、医療機関では行っていないため、自身で行う必要があります。
多数回該当
過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当とな り、上限額が下がります。
多数回該当の場合 | |
ア | 140,100円 |
イ | 93,000円 |
ウ | 44,400円 |
エ | 44,400円 |
オ | 24,600円 |
帝王切開の手術にかかる費用はどこの病院で出産をしても同額と言われており、予定帝王切開の場合は20万1,400円、緊急帝王切開の場合は22万2,000円で、このうちの3割が自己負担となり、およそ6万円です。
例)緊急帝王切開とその他の検査や治療による保険適用前の総医療費が30万円、自己負担額が9万円でした。ウの年収約370~約770万円の所得区分の方の場合、計算式に当てはめてみると、
80,100円+(300,000円ー267,000円)×1% =80,430円 こちらが自己負担限度額です。
すでに支払った90,000円ー80,430円=9,570円が払い戻し金額となります。
その⑤:高額療養費の申請方法
自身が加入している公的医療保険に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給を受けることができます。病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
ご加入の医療保険によっては、「支給対象となります」と支給申請を勧めたり、さらには自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれたりするところもあります。支給までは、受診した月から少なくとも3か月程度かかります。
高額療養費は、申請後、各医療保険で審査した上で支給されますが、この審査はレセプト(医療機関から医療保険へ提出する診療報酬の請求書)の確定後に行われます。レセプトの確定までには、一定の時間がかかります。
医療費のお支払いが困難なときには、無利息の「高額医療費貸付制度」を利用できる場合があります。制度の利用ができるかどうか、貸付金の水準はどのくらいかは、ご加入の医療保険によって異なりますので、お問い合わせください。
限度額適用認定証
事前に「限度額適用認定証」を病院に提示すると、保険適用となる医療費に関して、お支払いいただく金額が自己負担限度額までとなります。
「限度額適用認定証」は、加入先の健康保険組合等に「健康保険限度額適用認定申請書」を提出すると、おおよそ1週間ほどで届きます。
法令上、限度額適用認定証の有効期限は、申請書が健保組合に到着した日が属する月の1日から一年間となります。
有効期限は限度額適用認定証に記載してあります。有効期限を過ぎた「限度額適用認定証」は速やかに健保組合へ返却します。
有効期限後も引き続き限度額適用認定証が必要な場合は、旧限度額適用認定証を返納した上で改めて申請します。
あとから申請をすると約3ヶ月の時間を要するので、あらかじめ限度額適用認定証を発行しておくと良いでしょう。